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ビジネス見聞録

第1回 強い組織づくりの秘訣|講師インタビュー「人が動く組織のつくり方」松岡保昌氏

ビジネス見聞録 経営ニュース

 社員の意欲を高め、儲かる会社にするには何をすべきか。リクルート、ユニクロ、ソフトバンクと、名だたる企業を渡り歩いてきた経営コンサルタント・松岡保昌氏に、時代の変化にも柔軟に対応できる「人が動く組織づくりの秘訣」をお聞きしました。(1/3)
このインタビュー記事は、全3回にわたってお送りします。

■松岡保昌 氏(まつおかやすまさ)/株式会社モチベーションジャパン 代表取締役社長
 人の気持ちや心の動きを重視し、心理面からのアプローチを得意とする経営コンサルタント。同志社大学卒業後の1986 年‐2000 年、リクルートで「就職ジャーナル」編集や、組織人事コンサルタントとして活躍。その後、柳井正氏が率いるファーストリテイリングに参画。人事総務とマーケティングの執行役員を歴任し、ユニクロ事業の飛躍の契機となる「製造小売モデル」への転換期にあった同社の急成長を、人事・組織の側面から支える。2004 年には孫正義氏が率いるソフトバンクに参画。B to C事業の強化を図る中、初代ブランド戦略室長として、CIを実施。現在の同社ロゴマークを作成する作業なども主導。また、福岡ソフトバンクホークスマーケティング代表取締役、福岡ソフトバンクホークス取締役として、球団立ち上げにも携わる。売上1兆円の大台突破、営業赤字→営業黒字へと成長する過程を支える。現在は、これまでの経験を活かした企業コンサルティングに精力的に取り組む。


社会構造が変わる今、「変化適応力」で乗り越える

Q 初めに「人が動く組織づくりに必要な要素」について教えてください。

 まず、コロナをきっかけに人々の生活様式や行動、意識なども含めて、社会は構造的に大きく変わっています。
 
 例えば、DXという観点でよく語られますが、仕事の仕方とかビジネスの在り方もどんどん変化していますよね。だから、今後のキーワードは「変化適応力」なのです。いかに早く変化に適応できるか。その戦いになってきています。

 実際、もうコロナ禍3年目になりますけど(2022年3月時点)、同じ業界でもうまく変化適応できた会社と、顧客ニーズの変化に対応できずに苦しんでいたり、大きなダメージを受けた会社があります。両極化しているのです。

 この「変化適応力」は、人が自ら動く組織でないと実現できません。まず、変化というのは2つの視点で考える必要があります。1つは経営サイドです。幹部とか経営者が考える長期的視点での構造変換です。DXによって、自社のビジネスや仕事のやり方にどのように影響するのか、どう変わるのかなどです。これはやはり経営側が考えなければいけません。

「経営者目線」と「現場目線」、変化は2つの視点で捉える

 そして、変化というのは経営側だけの問題だと思いがちなのですが、本当はもう1つすごく重要な視点があるのです。それは、リアルな変化、すなわち現場側の変化です。変化は現場で起きるということです。実際にコロナ禍になって、顧客が求めるものが変わったというのは、経営者はすぐには分からなかったはずです。しかし、現場ではお客さんに「こんなモノは、ないですか?」とか聞かれているのです。 
 
 例えば、料理を入れるトレーのようなパッケージでも、「運ぶときに料理の汁が完全に漏れないパッケージはないものですか」とか、それまでは多くなかった要望がたくさん来るようになるのです。それに対応できたところは新しいデリバリー用のパッケージとして売り上げを伸ばすことができるでしょうし、乗り遅れたところは、結局使われなくなるのです。

 何を言いたいかというと、リアルな変化は現場で起きるので、現場の人がいかにそのアンテナを立てているかが大切だということです。そして、ここからが人が動く組織に関係してくるのですが、さらに重要なのは、そこで得た情報を自ら動いて上に伝えたり、変化に対応できるようにしようと動いてくれるかどうかなのです。この主体性があるかどうかが企業の変化適応力を決めます。

 変化適応力というのはまさに予期せぬ状況の中でどう変わっていけるか、ということです。私は変化を捉える視点を2つと言いましたけれども、1つ目の経営者が考える変化というのは、変化適応というよりも変化適応のための準備です。

 例えば、SDGsについて考えなければいけないし、CO2を削減しないとしけない。DXという流れは止められないから、自社で対応できるようにしなければいけない。さらに、今まで人が作業をしていたのをロボティクスで自動化するように、システムについて人手をかけなくていいものは、人手をかけなくしよう、などです。これは予測できることのために準備をするということで、本当の意味での変化適応力ではないのです。

仕事の価値を認識させる鍵は、中間管理職にあり

Q 変化適応できる組織をつくる、そして、社員の主体性を身につけるために何をすればよろしいでしょうか?

 まず、働いている一人一人が、自分の役割の重要性を認識しているかどうかをチェックしてみてください。一人一人が自分の仕事の重要性を認識するということは、先ほどの、情報を上に上げる話にも通ずるのですが、自分がやっていることの重要性がわかるから、自分が得た情報を上げようと思うのです。 

 さらに、新しい要望に応えるために、社内を動かしてでもそれを実現させようと思うのです。そういう気持ちにさせることがすごく大事です。そして、その状況をつくるうえでは、中間管理職の役割がすごく重要なのです。これを実現するのは経営トップだけではできません。中間管理職の力が必要です。

日常の「ひとこと」が、社員の意識と行動を変える

 管理職には、その仕事はなぜ大事かということを伝える役割があり、仕事に対する価値観をつくっていく責任があるのです。逆にいうと、理想とは違う方向へ導いてしまうのも管理職。実際にメンバーの行動にストップをかけているのは、管理職の価値観のもとに発せられた言葉であった、ということも少なくありません。

 例えばメンバーが、「お客さんから、こういう要望がたくさん増えているのです」と上司である課長に言ったとしますよね。そうすると、その課長が、「わかったよ、そんなこと。そんなことはいいからさ、先にこれをやってくれよ」というようなことを言ったとしたら、そのメンバーは二度とそのような報告をしなくなるでしょう。ここがポイントなのです。

 だから常に「よく言ってくれたね」と。「確かに今はそのサービスはうちにはないけど、今後はあり得るな」と。「ちょっと一緒に動いてみようか」、「もうちょっと詳しくどういう用途で使うのか聞けるか、聞いてみてくれ」みたいな対応を課長がしたとしたら、自分の仕事の価値も認識するし、またそういう情報を掴んだら上にあげようと思う。その状態をつくっているのが、中間管理職なのです。社長の役割は、そのような対話ができる幹部をつくることです。

タスク管理だけでは「強い組織」はつくれない

Q 仕事上、社長が社員と、または上司が部下と、円滑にコミュニケーションを進めるためにはどうすればよいですか?

 それは、「コト」であるタスクと、「ヒト」であるマインドを意識することです。仕事上、社長は社員を、上司は部下をマネジメントする機会が多くありますよね。その際にこの2つを意識してコミュニケーションをとれば、良い関係性が築けます。

 しかし、社長や役員、幹部、マネージャー、部長、課長もそうですが、人によっては「コト」のみのマネジメントに終始しているケースがすごく多いのです。これではいけません。まず、「コト」とは、自分が任されているタスクであり目標です。営業であれば、製品をいくつ売ってきてくれとか、これだけの売上利益をあげてほしいとか、一つの目標のことをいいます。

 一方で「ヒト」とは、「コト」の達成のために取り組んでくれている人の状況や気持ちを、きちんと理解し配慮すること。これがすごく重要です。「コト」のタスクを達成するから売上が上がり、利益が上がり、みんなに分配できて、みんなが生活できるわけですから、それは大事な行動ですが、「コト」と「ヒト」の両方をマネジメントできないといけません。このスタンスがない人は、コミュニケーションは取れません。業務命令しかできないのです。

「人は道具ではない」「傾聴」の意識で、コミュニケーション上手に

 「ヒト」のマネジメントが重要であることを理解したら、次の2つのことを認識してください。1つは、その人自体は、道具じゃないということ。今、目の前で働いてくれている人は、その人の人生の中の一部の時間を使って働いてくれているわけです。キャリアコンサルティングの世界では、「多重役割」と言いますが、人はいろんな役割を持っています。

 例えば、ご結婚されている方であれば、家庭人という役割もあるし、地域の活動をされていたら、市民という役割もありますよね。人によっては家に帰ったら子育てとか、介護とかを担いながらも、仕事をしてくれている。様々な役割を持っている中で、職業人として今ここで働いてくれているという、「ヒト」として見たら、そういう見方がまずできるわけです。

 いろんな役割を担いながらも、今ここで仕事をしてくれるというふうに思えるかどうかで、ありがたさとか感謝とか、人としての見え方がまったく変わりますよね。人を道具と思っているスタンスを変えられるかどうか。「ヒト」のマネジメントの重要性を理解している人は、コミュニケーション上手です。

 2つ目に意識してほしいことは、話をしっかり聞くということ。俗にいう「傾聴」です。そして、「評価をせずに聞く」ことが重要なポイントです。人は何年も生きてきた中で、自分の価値観と照らし合わせて評価をする習慣がついています。「違うだろう」とか、「何もわかってないな」、「ここはこうだろう」という姿勢で人の話を聞いてはいけません。これは無意識のうちに身についているので、相当意識しないと直せません。

※(第2回に続く)第2回は、ユニクロ・柳井会長の「ヒト」マネジメントなどについてお答えいただきました。

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