其の三十七 存在価値のある事業のバランスシートは良い
会社の存在価値や存在意義というものがバランスシートにどう関係してくるのか、なかなかイメージできないかもしれませんが、実はとても大切な関係があります。 会社の存在価値や存在意義というものは、会社で行っている事業が、その地域にどうしても必要である等になります。
考えていることを言葉にすることは案外、難しいものですが、この存在意義を言葉にして残していただきたいのです。
経営理念も、創業者の様々な思いが凝縮されています。書いてしまえば簡単なものになりますが、その言霊は計り知れないのが通常です。
存在意義も同様です。
銀行から借入をしている場合、諸般の事情で、銀行から、金利の引き上げや返済額の増額等の依頼があったとしましょう。
もちろん安易に突っぱねてはいけません。その際、いま行っている事業が、この地域に、日本にそして地球に必要なものであるということを明確に提示し、銀行の担当者に、事業の継続を応援したいと思ってもらえるようにすることが大切なのです。
取引先に対しても同様です。
例えば、売掛金の回収が手形での場合、割り引けば金利もかかり、資金繰りに影響を及ぼしている場合もでてきます。
取引先にとって自社が価値ある会社ということを文章にし、先方に説明し、手形を現金に変更してもらうことも実際には可能なことなのです。
もちろん取引先が大企業であれば、手形を現金に換えてもらう交渉は大変です。
無防備に手形を現金に換えてもらうようお願いしたところ、取引停止または取引縮小されることが多いのです。ですから、取引先にとって自社が、競合他社と比較して優れているものを明確にする必要があります。
ある金属の卸業者は、多少の過剰在庫により資金繰りを少なからず悪化させていましたが、ここに頼めば確実に、翌日、納品してくれるという他社にはない強みがあり、この強みを取引先にとって自社の存在価値と考え、手形を現金に変更した例もあります。
最初は、この会社の社長も半信半疑でしたが、結果として、現金決済になったことで、手形割引の金利がなくなり、多少の過剰在庫の資金不足を補えることができたのです。
借入金の返済スケジュールの変更(リスケジュール、リスケといわれています)もキャッシュフローが良くなる手法です。
半年から一年間の返済の凍結または返済金額の削減を銀行にお願いに行きます。
もちろん銀行にとってウエルカムなことではありませんから、簡単にOKすることはありません。
また、手ぶらで銀行に出向き、リスケジュールをお願いしても100%無理です。
最低限、銀行にとって自社の存在価値を明確に話すことが大切です。この地域にとって自社の行っている事業の価値をきちんと整理をしていきます。
また、半年程度の日別の資金繰り予定表も提出します。
そして、一定期間、返済を凍結していただければ、事後、返済可能性が確実になる計画を提出することも必要になります。
こういった汗をかかず、銀行に出向くことは何も意味のない行為です。
このように存在価値を明確にし、社員のみならず取引先にも自社の存在価値を共有してもらうことで、余計な支出も減少し、それはつまりバランスシートの改善につながってきます。
バランスシートを無理やり良くするために、増資をしたりするよりは、事業の存在価値をしっかりと考え、誰もがわかるように短い言葉にまとめ上げ、社員だけでなく取引先にも理解を求めることの方が、バランスシート改善に役立ちます。
また、存在価値をお客様と共有することは、お客様が本当の得意様に代わり、消費税増税でも逃げていかない効果をあります。
ちなみに、お客様とは、御社の様子を客観的に見る人。
お得意様とは、お客様の意を得ると書きます。
お客様がお得意様になるためには、存在価値を明確にして、しっかりと伝えることが大事なのです。