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人間学・古典

第16回 リーダーを支える者(1) よこしまな者を近づけると…

経営に活かす“十八史略”

リーダーが権力を握っている場合、これにすり寄ってくる者は後を絶ちません。

自分の周囲に誰を置くか、後継者である息子の教育係は誰に任せるかなどは、古くから頭を悩ませる問題でした。実際に、よこしまな者を近づけて大失敗した例は「十八史略」に数多く出てきます。

唐(とう)王朝の玄宗(げんそう)皇帝は、2代前の中宗(ちゅうそう)皇帝が毒殺されるなどの朝廷内の混乱を収めて即位した後、当初は賢臣を用いて優れた政治を行い、唐の最盛期を作り上げた、優れた人物でした。しかし、そんな玄宗も美人には勝てず、国を崩壊寸前にまで追いやってしまったのです。

愛していた寵妃(ちょうき)に死なれ、楽しめない日を送っていた玄宗の耳に、玄宗の息子、寿(じゅ)王の妃が絶世の美女であるという情報が入りました。

玄宗は実際に彼女を見て、すっかりとりこになったのです。しかし、さすがに息子の嫁をいきなり奪うわけにはいきません。

そこで、彼女自身の意志ということにして寿王に願い出て尼僧にならせ、寿王には他に妃をあてがいました。

その後、彼女を後宮に入れたのです。これがあの楊貴妃(ようきひ)です。こうして、楊貴妃が玄宗の寵愛を独占するようになりました。

ところで、これ以前に玄宗は、異民族の武人で唐の将となっていた安禄山(あんろくざん)という者の命を救ったことがありました。

安禄山は辺境の防備に当たっていて奚(けい)と契丹(きったん)に敗れ、その責任を問われていたのです。宰相の張九齢(ちょうきゅうれい)は死刑を主張しました。

  「安禄山には謀反(むほん)の相(そう)があります。今殺すべきです。そうしなければ、後日、必ずや憂いの種となるでしょう」

 と訴えたのですが、玄宗は安禄山の知勇を惜しみ、殺さなかったのです。

安禄山は悪賢(わるがしこ)い男でした。玄宗の側近が安禄山のいる平慮(へいろ)に出張してきたら、手厚く賄賂(わいろ)を贈って機嫌をとったので、それらの側近どもは都に帰ると、玄宗の御前でこぞって安禄山を誉めたのです。玄宗は安禄山をますます賢者だと考えるようになりました。

その頃、楊貴妃のおかげで楊氏の一族は出世し、権勢をふるうようになっていました。

安禄山は帝の命によって楊貴妃の従兄(いとこ)らの兄弟分となり、さらに自ら願い出て、楊貴妃の義理の息子ということにしてもらいます。

安禄山は玄宗の歓心を買うために、まず楊貴妃に気に入られることを考えたのです。狙い通り、楊貴妃は安禄山に心を許すようになりました。

安禄山の誕生日の3日後、召されて宮中に入った彼に、楊貴妃はあや絹で大きなおむつを作って彼に着せ、美しいいろどりの輿(こし)に乗せて宮女たちにかつがせました。騒ぎを聞いて、玄宗が何ごとかと側近に尋ねると、

  「楊貴妃が禄坊や(安禄山のこと)に産湯(うぶゆ)をつかわせているのでございます」

  との答え。玄宗は楊貴妃に産湯のお祝い金を賜ったといいます。

これ以来、安禄山は大奥に出入りし、夜通し退出せず、外部にはみだらな評判が立ちました。楊貴妃と安禄山の密通のうわさです。

しかし、玄宗はまったく2人を疑いませんでした。それどころか、さらに安禄山に重職を与えたのです。彼は強大な兵力を傘下におさめることになりました。

そして天宝14年(西暦755年)の冬、安禄山はついに兵を起こします。玄宗側の官軍が大敗北を喫し、ついに都を捨てて西へ落ちのびた際、従ってきた将兵らはいずれも飢え疲れて憤慨しました。

こうなったのも皆、楊(よう)氏らのせいであるとして、彼らを切り殺し、さらに玄宗に迫って楊貴妃を絞め殺させたのです。

その後、安禄山側の内輪もめなどもあり、最後には官軍が勝利して唐王朝は保たれたのですが、楊貴妃にうつつを抜かした玄宗はこの一件で国をゆるがし、自らも不名誉を被り、最晩年は外部の者との接触もままならぬ鬱々とした生活を余儀なくされました。

 

この例からも分かるように、

 

  こちらを気持ちよくさせる言動で近づいてくる者は危険

 

です。他人の私欲と自分の私欲がからみ合ったとき、ろくな事になりません。重々、お気をつけください。

 
 
 
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