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人間学・古典

第23回 トップの責任とは 殷の湯王の反省

経営に活かす“十八史略”

 あなたが企業のトップであれば、文天祥(ぶんてんしょう)や諸葛孔明(しょかつこうめい)、范蠡(はんれい)のような部下が欲しいでしょう。
 できればずっと自社に留まり、力を尽くして欲しいと考えるはずです。
 それにはあなた自身が魅力的でなければなりません。いったい、どのような点に気をつけて日々を過ごせば、あなたの魅力は増すのでしょうか。
 「十八史略」には、以下の話があります。
 貪欲、残虐な性格で、寵姫(ちょうき)の末喜(ばっき)と共に酒池肉林(しゅちにくりん)などという暴挙を行っていた夏(か)の桀(けつ)王を伐(う)ち、殷(いん)を興した湯王ですが、こんなことがありました。
 ある日、湯王が外出すると、一人の猟師が網を四面に張りめぐらして祈っているのを見ます。その祈りの言葉は、
 「天より降り来るもの、地より出で来るもの、四方より来るものは皆、わが網にかかれ」
 というものでした。湯王が嘆いていうには、
 「ああ、ひどい。これでは絶滅してしまう」
 そこで、その網の三方を取り除かせ、改めて祈って言いました。
 「左へ行きたいものは左へ行け、右へ行きたいものは右へ行け、わが命にしたがわない者だけわが網にかかれ」
 諸侯はこの話を伝え聞き、口々にこう言いました。
 「湯王の仁徳は偉大である。禽獣(きんじゅう)にまで及ぶとは」
 また、干ばつが7年も続いたときのことです。天文官が占っていうには、
 「これは人間をいけにえにして祈るほかに方法がありません」
 と。湯王は、
 「私が雨乞いをするのは人民のためなのだ。もし、どうしても人を犠牲にして祈れというのならば、私自身がその犠牲になろう」
 といって、飲食や行動を慎み、からだを洗って心身のけがれを取り、爪を切り、髪を断ち、白木の馬車を白馬にひかせてそれに乗り、身には白い茅(ちがや)をまとった死装束で、わが身を犠牲として桑林(そうりん)の野に行って雨乞いをしました。
 そのとき、6つのことでみずからの不徳を責めます。
 「私の政治が節度を失っていなかったか、
  人民が仕事を失い、苦しんでいなかったか、
  私の宮殿が立派過ぎていなかったか、
  後宮の女たちの頼みごとに応えすぎていなかったか、
  賄賂(わいろ)が横行していなかったか、
  ウソの告げ口をする者が多くなっていなかったか」
 この言葉の終わらないうちに、大雨が降ること数千里四方に及びました。
 このような徳の高さでもって人々の上に立ち、政治を行うのが王者です。
 この6つの視点を企業の社長に置き換えれば、

  ・マネジメントをきちんと行なっているか 
  ・社員のやるべき仕事を生み出しているか
  ・私腹を肥やしていないか
  ・好きな異性の言いなりになっていないか
  ・社の内外で贈収賄が行なわれていないか
  ・他人の悪口、陰口を言う者が増えていないか

 前の4つはまさに社長自身の行為の反省、後の2つは社長が悪影響を与えて出来た社風ということになります。
 日々、以上の諸点で自らをチェックする社長であれば、優秀な社員が離れることはないでしょう。

 

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