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- 経営に活かす“十八史略”
- 第1回 「十八史略」は社長の必須図書
先日、私が講師を務める経営セミナーで「十八史略」中のエピソードのいくつかをピックアップしてお話ししたところ、多くの参加者に「大変わかりやすかった」と好評をいただきました。
ところが、「十八史略はご存知でしたか」と伺うと、ほとんどの人が首をかしげ「すみません、不勉強でして…」と恥ずかしそうにされます。「十八史略」はせいぜい高校の文学史の授業で名前だけ覚えさせられる程度のものですから、知らなくても恥ずかしいことではありません。
ならば少しさかのぼって江戸時代の日本ではどうだったかというと、「十八史略」は武士が親しむべき重要な書物の1つだったのです。この中に書かれている内容を一通り知っていないと、まさに恥ずべきことでした。
「鼓腹撃壌(こふくげきじょう)」
「四面楚歌(しめんそか)」
「握髪吐哺(あくはつとほ)」
「先(ま)ず隗(かい)より始めよ」
「危急存亡の秋(とき)」
「三顧之礼(さんこのれい)」
「哭(な)いて馬謖(ばしょく)を斬る」
「死せる孔明、生ける仲達を走らす」etc.
「十八史略」を知らなくてもこういった言葉は聞いたことがあるでしょう。それぞれの言葉の背景には激しい時代を生きた人間の血なまぐさいドラマがあります。人は生きるか死ぬかという体験の中で、組織や個人の盛衰に関わる重要な教えを学ぶもの。そのような教えこそ、人間にとって本当の宝と言えるのです。
「はるか昔の、しかも日本ではない場所で起こったことから学べることがあるのか?」と疑問を抱かれるかもしれませんが、どんなに時代や場所が違っても人であることに変わりはありません。彼らが起こす問題は、現代に生きる日本人に生じる問題と本質的には同じです。例えば、
・巨額な財政赤字
・経済成長の鈍化
・政治の停滞
・人口の減少
・貧富の差の拡大
・進展の見られない領土問題
・近隣の新興国の政治、経済、軍事面での脅威
などです。個人が引き起こす問題を見ても、
・親子、兄弟、男女間の確執
・飲酒によるトラブル
・富や財宝への固執
・不老長寿、美の追求
・権力欲、支配欲
などが挙げられますが、現代人とほぼ同じなのです。
「十八史略」には中国の古代三皇五帝から南宋滅亡までが描かれていますが、これは十八ある正史(正統と認められた歴史書)のダイジェスト版ともいうべきもの。南宋末から元の初頭ごろに生きていた曾先之(そうせんし)という人物が編集した書物です。
この書があるおかげで、中国大陸に生きる人は大陸の歴史を一気に学べるようになりました。また、三千年もの時間が流れているにも関わらず、人というものの本質は一向に変わっていないことを悟ったのです。
「古(いにしえ)をもって鏡となさば、興賛を見るべし」(歴史を鏡とすれば、興亡の原因を知ることができる)
唐の太宗は歴史を学ぶことの大切さをこう述べています。
現代の日本ではほとんど読まれることが無くなりましたが、人間というものを学ぶのに「十八史略」ほど有益な書物は無いといってよいでしょう。特に、成功を追い求める企業経営者にとっては格好のテキストです。
「十八史略」には、
・どうすれば成功するか
・どうしたら失敗を避けられるか
という問いへの答えが詰まっています。このコラムでは、毎回、「十八史略」から1つのエピソードを取り上げ、経営者の役に立つように解説をしていきたいと思います。
わずかな時間で読めますので、ぜひ毎回、目を通していただき、日常業務にご活用ください。