「決められないのは個人のせいではなく、意思決定のプロセスに原因がある。個々の選好に基づいた全体としての意思を統一しようとすると、
どうしても議論が行き詰まってしまうのである。」
18世紀フランスの数学者であり社会理論家であるニコラ・ド・コンドルセが最初に気づいた「投票のパラドックス」と呼ばれる現象で、すべての選択肢について、それを選好する多数派が形成されて対立する時に発生します。その1世紀半後、著名な経済学者ケネス・アロー(1921〜2017年)が、コンドルセの研究に立脚した一連の数学的証明を行って、「不可能性定理」を確立しました。
チームワークは、多数決で決められ、それによりうまく行くというのは幻想なのです。
例えば、3人の役員がいて、社用車を決めたいとなりました。
何の車が良いか?1台を決めます。
役員Aは、BMWが良いと言い
役員Bは、ベンツが良いと言い
役員Cは、レクサスが良いと言いました。
多数決でも決まらないし
それぞれの役員に、順番を付けてもらうと
役員Aは、1位BMW 2位ベンツ 3位レクサス
役員Bは、1位ベンツ 2位レクサス 3位BMW
役員Cは、1位レクサス 2位BMW 3位ベンツ
ということは
役員B,C見ると、レクサスがBMWに勝ち
役員A,B見ると、ベンツはレクサスに勝ち、
しかし
役員A,C見ると、BMWは、ベンツに勝つ。
つまり、三つ巴構造なので
多数決は絶対決まらないのです。
多数決がうまく行く最善の手段ではないと、すでに証明されているのです。
コスト削減を目指す9人から成るマネジメントチームがあって、次の三つの選択肢を比較、検討しているとします(各選択肢に順位をつけて考えるとする)。
(a)工場を閉鎖する。
(b)自社直販をやめて外部の流通業者を雇う。
(c)給与や福利厚生費を削減する。
各エグゼクティブは自分の選択を発表して理由を述べることができるが、
どれを選んでも、別のオプションを選択する多数派が存在しうる。
(a)>(b) (b) >(c) (c)>(a)
bよりaが良い
cよりaが良い
だが
aよりcが良いとなれば
どれが一番か決まらなくなる。
これは、選択肢が3つだから決められなくなるのか?
というとそうでもなく
二者択一でも起こる
例えば
・市場に打って出る
・この事業から撤退する どちら?
実は、もうひとつ
・どちらでもない
がある
なので、結局は3つあると同じになるのです。
つまり、決められない事があるということを知っておかなければならないのです。
前述の理由が決められない要素であり、
さらに
チームの成功を左右する決定的要因であり、かつ阻害要因でもあります。
4つの項目で矛盾が生じる。
・大規模になれば、力が増す⇔協力関係が薄れる
・多様性が進めば、多方面から検討できる⇔知識共有が起こりにくい
・地域の多様化⇔協力が起こりにくい
・教育水準の高さ⇔非生産的な対立が起こる
綱引きをすると
1対1の場合は、目一杯力を出すが
人数が増えてくると、1対1の時の力よりも
減ってくる現象を綱引き理論といいます。
1人で作業するときの力を100%とした場合
・2人の場合は93%
・3人の場合は85%
・4人の場合は77%
・5人の場合は70%
このように人数が増えるほど1人が発揮する力は減少していき、8人の場合は49%と「持っている力の半分以下しか発揮しなった」のです。
リンゲルマン効果とは別名「社会的手抜き」とも呼ばれ、
共同作業の際に無意識に手を抜いてしまう現象のことです。
フランスの農学者であるマクシミリアン・リンゲルマンにより提唱された
理論で、人は集団になると手を抜き一人で作業するよりも
発揮する力が減少するというものです。
ラタネとハーディの実験
目隠しとヘッドホンを着け、互いの行動が分からない状態にした
2人1組のチアリーダーを衝立を挟んで座らせ、
単独での条件とペアでの条件で大声を出してもらい
騒音計で音量を計測する実験をしたところ、
ペア条件での音量は単独条件の94%の音量しか出ず手抜きをしていた。
しかし、実験後の被験者たちはどちらの条件でも全力を尽くしたと
思っていたといいます。
これらの事例にあるように
チームワークを考える上で
今まで常識と思っていたことが異なったり
チームができれば
必然とよくなることではないと
知って、チームビルディングをしなければならないのです。
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