徳島市から車で1時間ぐらいの山間にある神山町は、地上デジタル放送化に際し難視聴対策として光ファイバーが張り巡らされたことを利用し、「とくしまサテライトオフィスプロジェクト」を立ち上げ、空き家となった古民家を利用した「首都圏企業の誘致活動」などを行い、成果をあげている。
最初は、外国人を含めたアーティストなどが興味を持ち、その後は、IT企業のサテライトオフィス利用が増え、移住も進んでいる。
神山町は人口が5,820人で、半分が65歳以上、県立高校分校の生徒は80人という過疎化、少子高齢化が進んでいる地域だが、サテライトオフィスを中心とした取り組みにより若い住民も増え、それにともなってイタリアンレストランも開店するなど、好循環が生まれている。
徳島県には、山を隔てた隣接地の上勝町で、お年寄り達が料亭で使うもみじなどを山で採取して市場に出す「葉っぱビジネス」が成功しているし、10月に「社長のメシの種探検隊」で訪れた、島根県邑南町の「A級グルメ」もあるが、どちらも横石氏(現第三セクター株式会社社長)、寺本氏(邑南町役場観光課)という行政側のキーマンが主導しているのに対し、神山町の場合は、民間のNPO法人グリーンバレーという5人の若い人を中心に進めている点が特徴だ。
そのため、とにかく移住者を増やしたいという方針ではなく、移住希望者が地域になじめるかどうかなどを見極めて判断し、空き家物件と移住者をマッチングさせるやり方をとっており、これが成功したため、今では空き家物件がなくなっている状況だ。
■サテライトオフィス・コンプレックス(KVSOC)
空き古民家の再生、移住支援などの次に取り組んでいるのが、閉鎖された619m2の元縫製工場を改修して2013年1月にオープンした、神山バレー・サテライトオフィス・コンプレックス(KVSOC)という共同仕事場(コワーキングスペース)で、私が行った時には、10社と明治大学理工学部などが入居していた。
ここは「成長するオフィス」というコンセプトのもとに、入居される方々に機器や備品を揃えてもらい充実を図ってゆくという面白い取り組みで、大きな広間のようなスペースに置かれている木製の調度品は、不要となった家具を住民から譲り受けて東京芸大の学生達が制作した木製の椅子やテーブルだった。
また、道を挟んだ向かいには、24人まで泊まれる宿泊施設と食堂ができており、合宿や泊まりこみの研修などにも利用できる。
それぞれの地域の強みを活かした徳島県神山町のような取り組みは、今後ますます増えそうだ。。