今回の日本経営合理化協会のパリ・バルセロナ視察ツアーでは、バルセロナで家族経営で成功しているワイナリーやイベントスペースを視察した。
自分の強みを活かし、外注を上手く利用しながらファミリー運営している企業の様子は、日本でも応用できる部分がたくさんあると感じた。
■アウグストゥス・Forvm
1980年始めに伯父が土地を購入し、1989年からワインの出荷を始めたというバルセロナ郊外のアウグストゥスは、競争の激しいワインビジネスに参入するにあたり、生産量は少なくとも、品質の高いものを作ろうと決めていた。
ワインを市場に出してみると、レストラン関係者の訪問があり、彼らが自家用に作っていたワイン・ビネガー(酢)が欲しいと言い出したため、1992年からはワインビネガーも販売を始めた。
ここのForvmというビネガーは、伝説的なバルセロナのレストラン「エル・ブジ」のシェフ、フェラン・アドリアや、サンパウのカルマンシェフなどが絶賛し、使用していることで世界的に有名となり、ノーベル賞晩餐会でも10年間使われた。
生産量はビネガーが年20万本、ワインが年10〜12万本で、最初の販売も輸出だったが、現在でも輸出が75%(30カ国)となっている。
最近は敷地にレストランとしても使える施設を建設、ここで我々はカタルーニャ州で5本の指に入る近隣のシェフによるテイクアウトのランチを食べたが、エル・ブジ風のメニューもあり、美味しかった。
家族経営で売上は150万ユーロ(2億円)だが、ビネガーという強みを発見し、それを活かした経営をしているため、ここ数年10%増が続いているという。
■エルプラベル
15年前に「このまま農業を続けていても将来はない」と考え、夫婦と息子の3人で12,000m2の土地にアーティスト作品(40アーティストの70作品)を置き、結婚式やパーティなどができるイベントスペースを作り始めたが、この10年少しずつそれが拡充している。
レストラン経営もホテル経営もやったことがなく、アートのことも知らない農家の夫婦なので、それぞれのことは専門家に任せている。
食器、食事はケータリング会社、イベントは運営会社などに外注しており、180人の大イベントや年間60回行われている結婚式などで週末は半年先まで埋まっている。

エルプラベルには、広大な土地に結婚式にも使われる円形劇場、木の迷路、部屋ごとに違うアーティストが手掛けるプチホテル、200人近く入るガラス張りのイベントホールなどが点在し、スペースを魅力的にするためのアート作品がいろいろな所にあるが、アート作品も施設もコラボレーションをしながら一つ一つ作っている。
2008年から毎年売上は20%増だが、固定費を最小限にしていることで、経営内容も安定している。
2017年にはアーティストのWataruによるピラミッドも立てる予定というが、エルプラベルは今後も少しずつ進化してゆきそうだ。